出入国在留管理庁は2026年8月4日、永住許可に関するガイドラインの改定案と永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン案を公表し、2026年9月3日までの予定で意見募集(パブリックコメント)を行っています。改定案では、世帯年収の水準、将来の年金受給見込額、日本語能力B1相当、制度・ルールの理解、学齢期の子の就学が新たに、または明確な物差しとして加わります。適用は2段階で、収入に関する部分は2026年10月ごろ、その他は2027年4月1日以降の申請からとされています。まだ「案」の段階であり、意見募集の結果により内容が変わる可能性があります。行政書士法人アクティス(鹿児島・熊本を中心に九州全域対応)では、改定前後のどちらで申請するのが有利かの見立てもお伝えしています。

何が起きているのか

2026年8月4日、出入国在留管理庁は次の2つを公表し、意見募集(パブリックコメント)を開始しました。

  • 永住許可に関するガイドラインの改定案
  • 永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン案

意見の募集期間は2026年9月3日までです。したがって、以下の内容はすべて**「案」の段階**であり、最終的な取扱いは変わる可能性があります。当事務所でも、確定した基準としてはご案内していません。

変わるのは法律そのものではなく、審査の物差しです。永住許可の3要件(素行善良・独立生計・国益)は入管法22条2項に定められたままで、その要件を審査するときに何をどう見るか、という部分が具体化されます。

改定案の冒頭には、「永住者」は在留活動にも在留期間にも制限がない最も安定した法的地位であり、その後の生涯を日本で過ごすことが想定されることから、許否の判断にあたっては特に慎重な審査を行う必要があるという考え方が明記されました。今回の見直し全体の方向性を示す一文です。

主な変更点

項目現行改定案
収入(独立生計)具体的な金額基準は示されていない世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準に継続して達しているか
年金(独立生計)項目なし将来の受給見込額が、上記の年収水準で30年間厚生年金に加入していた場合の水準に達しているか(新設)
日本語能力(国益)項目なし日本語教育の参照枠のB1相当以上(新設・例外あり)
制度・ルールの理解(国益)項目なし「生活・就労ガイドブック」の記載事項を中心に確認。理解が乏しい場合は消極評価
学齢期の子の就学(国益)項目なし学齢期の子を小学校・中学校に通学させていなければ消極評価
配偶者などの特例婚姻3年以上+在留1年以上(実子等は1年以上)婚姻5年以上+在留3年以上(実子等は3年以上)
素行善良要件—特段の変更なし

影響が大きいのは収入と年金です。現行のガイドラインには具体的な金額基準がなく、実務上は「世帯として安定した生活が見込めるか」という総合判断でした。改定案はこれを、日本人世帯の平均収入という外から見える水準に置き換えます。年金についても、これまで永住審査でここまで正面から問われる項目ではありませんでした。

適用は2段階に分かれます

ここが実務上いちばん重要な点です。

① 収入と「公共の負担とならないこと」→ 2026年10月ごろから

改定案の概要では、収入に関する要素は2026年(令和8年)10月に施行するとされています。さらに本文では、これらの要素は改定日から6か月前の日以降の申請であって、改定日において申請中である案件にも適用するとされています。すでに提出して結果を待っている申請にも、新しい収入の考え方が及ぶ可能性があるということです。

② それ以外の変更 → 2027年4月1日以降の申請から

年金、日本語能力、制度・ルールの理解、学齢期の子の就学、配偶者などの特例の伸長は、2027年4月1日以降に受け付けられた申請から適用されます。

2027年3月31日という区切り

もう一つ、日付で押さえておくべきものがあります。

現行の取扱いでは、在留期間「3年」を有する場合も「最長の在留期間をもって在留している」ものとみなされています。多くの方が在留期間3年で永住申請できているのはこのためですが、この取扱いは2027年3月31日で終わる方向が示されています。

同じ日付で、配偶者の特例も切り替わります。現行は婚姻3年+在留1年ですが、改定後は婚姻5年+在留3年です。日本人と結婚して3年、日本で暮らして1年という条件で申請できる方は、時期によって扱いが変わることになります。

このあたりの判断は永住申請は2027年3月までに出すべきかで詳しく整理しています。

相談の現場から

改定案の話をすると、「では急いで出したほうがよいのですね」と言われることが多いのですが、 そう単純ではありません。

急いで出す意味があるのは、いまの基準なら要件を満たしている方だけです。 納付の記録に問題を抱えたまま期限に間に合わせようとしても、 結果は不許可で、しかも再申請では新しい確認対象期間を積み直すことになります。 かえって遠回りです。

ですから、ご相談ではまず「いまの基準で通るか」を先に確かめます。 通る見込みがあれば時期を逆算し、足りないものがあればそれを整える計画を立てる。 改定は判断の材料であって、急かすための材料ではないと考えています。

申請取次行政書士 多伊良 壮平

影響が大きいのはどんな方か

改定案を読むかぎり、次のような方は早めの検討をおすすめします。

  • 世帯年収が平均前後の方(基準が「平均を上回る水準」になるため)
  • 自営業・フリーランスの方(厚生年金ではなく国民年金のため、受給見込額が届きにくい)
  • 配偶者を扶養している方(世帯単位で審査され、家族滞在の方の収入は世帯年収に合算できません)
  • 日本語の試験を受けたことがない方
  • 学齢期のお子さんがいる方
  • 現在の在留期間が**「3年」**の方

逆に、就労資格で長く働き、厚生年金に継続して加入し、世帯年収も安定している方であれば、改定後も評価が大きく変わるわけではありません。不安をあおるつもりはなく、ご自身がどちらに近いかを早めに確認しておくことが大切だとお伝えしたいのです。

もっと詳しく

改定案の各項目は、公表資料に基づいて個別に解説しています。

現行の要件そのものは永住許可の要件——10年ルールと、それが短くなる特例にまとめています。

※ 本ページは、出入国在留管理庁が2026年8月4日に公表した「永住許可に関するガイドライン改定(案)」および同(概要)、 「『永住者』の適正化に係るパブリック・コメントの実施について」に基づいて作成しています。 改定案は意見募集の結果により変更される可能性があります。個別の状況により判断は異なります。