2026年8月4日、出入国在留管理庁は永住許可ガイドラインの改定案とあわせて、「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」の案を公表しました。
背景にあるのは令和6年(2024年)の入管法改正です。これまで「永住者」の在留資格が取り消されるのは、原則として永住許可の申請に虚偽があった場合に限られていました。改正により、これに3つの取消事由が追加され、2027年(令和9年)4月1日に施行されます。
ガイドライン案は、外国人の方の予見可能性、入管の処分の公平性、国や自治体による適切な通報の確保を目的として、法の解釈と運用の指針を明確にし、取消しが想定される具体的な事例を例示するものです。改正時の附帯決議で、ガイドラインの策定と周知が求められていました。
不安をあおる趣旨ではありませんので、**「該当しないとされている場合」**もあわせてお伝えします。
追加される3つの取消事由
① 故意に公租公課の支払をしないこと
「公租公課」とは、租税および租税以外の公的な負担金全般を指します。所得税、住民税、法人税のほか、公的医療保険料や年金保険料が含まれます。
対象となるのは、支払義務があることを認識しているにもかかわらず、あえて支払をしない場合です。判断にあたっては、滞納の態様、経緯、滞納後の支払状況、生活状況といった本人の事情を総合的に考慮し、支払う意思がないことが明白と認められる場合とされています。支払をしないことについてやむを得ない事情があり、本人に帰責性が認められない場合は該当しません。
そのうえで、実際に取消しが想定されるのは、次のような場合です。
- 今後も支払をする意思がないことが明らかな場合
- 滞納額・滞納期間・滞納回数が、社会通念上看過しがたい場合
該当しないとされている例も明示されています。
- 病気、災害、失業などのやむを得ない事情がある場合
- 催告等に応じて支払う意思を示し、分納や猶予の措置を受けている場合
「滞納があると即座に永住が取り消される」という制度ではありません。支払う意思を示し、自治体や年金事務所と話をしているかどうかが分かれ目になります。
② 入管法上の義務違反
入管法上の義務や禁止規定を遵守しない場合です(退去強制事由に該当する場合を除きます)。ただし、病気や災害といった「正当な理由」がある場合は該当しません。
取消しが想定されるのは、今後も義務を履行する意思がないことが明らかな場合や、義務違反の態様が社会通念上看過しがたい場合です。
想定される具体的な事例としては、次のものが挙げられています。
- 在留カードの有効期間の更新をしない、常時携帯しない、提示を拒否する
- 在留カードの偽造・変造、他人名義の在留カードの行使・提供・収受
③ 特定の刑罰法令違反
刑法の窃盗、詐欺、恐喝、殺人のほか、危険運転致死傷の罪など、一定の罪により拘禁刑に処せられた場合です。いずれの罪も故意犯が対象とされ、刑期の長短を問わず、拘禁刑の執行が猶予された場合も含まれます。
取消しが想定されるのは、犯罪傾向が進んでいると認められる場合です。具体例としては、前科(施行前のものを含む)があり、さらに上記の罪により拘禁刑に処せられた場合が挙げられています。
取消し以外の選択肢——「定住者」等への職権変更
見落とされがちですが重要な点です。ガイドライン案は、公租公課の事由について、取消しに至らない場合の対応も示しています。
引き続き日本に在留することが適当でないと認められる場合は取消しとなりますが、それ以外の場合には、「定住者」等の在留資格に職権で変更し、その後の在留期間の更新手続の中で在留状況を確認する、という運用が想定されています。
つまり、ただちに日本にいられなくなるのではなく、在留資格の位置づけが変わり、更新のたびに状況を見られる形になり得るということです。
国や自治体からの通報について
ガイドライン案は、国や地方自治体による通報の考え方も示しています。
- 通報は義務ではなく、各取消事由に該当すると思料する場合に、必要かつ可能な範囲の情報を入管へ提供するもの
- 通報を端緒として、入管での事実の調査や意見聴取によって事実関係を正確に把握したうえで、法務大臣が取消しの要否等を決定する
通報がそのまま取消しにつながるわけではなく、調査と意見聴取の手続を経る枠組みになっています。
いま確認しておきたいこと
永住者の方に、この機会に確認をおすすめしたいのは次の3点です。
- 住民税・国民健康保険料・年金保険料に未納がないか——督促状を放置している状態がいちばん危険です。支払えない事情があるなら、分納や猶予の相談をしておくこと自体が意味を持ちます
- 在留カードの有効期間——永住者の方は在留期間に期限がありませんが、在留カード自体には有効期間があり、更新が必要です。失念しやすい手続です
- 住居地の届出——引っ越しから14日以内の届出を忘れていないか
これらは、これから永住を申請する方の審査でも、過去にさかのぼって評価される項目です。
出典
- 出入国在留管理庁「『永住者』の適正化に係るパブリック・コメントの実施について」(2026年8月4日)
- 同「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン(案)」および同(概要)
※ 本記事は2026年8月15日時点で公表されている資料に基づく解説です。ガイドラインは案の段階であり、意見募集の結果により変更される可能性があります。個別の状況により判断は異なります。