特定技能所属機関(受入れ機関)は、特定技能雇用契約の適正な履行が確保されるものとして特定技能基準省令に定める基準に適合しなければなりません。中心となるのは、労働・社会保険および租税に関する法令の規定を遵守していること、特定技能雇用契約の締結日前1年以内またはその締結日以後に、外国人が従事する業務と同種の業務に従事していた労働者を非自発的に離職させていないこと、同じ期間に自らの責めに帰すべき事由により外国人の行方不明者を発生させていないこと、そして拘禁刑以上の刑や労働関係法令違反による罰金刑などの欠格事由に該当しないことの4点です。受入れ後は、地方出入国在留管理局への定期または随時の届出義務があります。行政書士法人アクティス(鹿児島・熊本を中心に九州全域対応)は、受入れ前の適格性の確認から受入れ後の届出までお手伝いしています。
会社側にも基準があります
特定技能では、外国人本人が要件を満たすだけでは足りません。入管法2条の5第3項は、特定技能雇用契約の相手方となる本邦の公私の機関について、適合特定技能雇用契約の適正な履行が確保されるものとして法務省令で定める基準に適合しなければならないと定めています。
運用要領は、受入れ機関の責務を次のように整理しています。
- 出入国管理関係法令・労働関係法令・社会保険関係法令・租税関係法令等を遵守すること
- 制度の目的を理解し、制度がその意義に沿って適正に運用されることを確保すること
- 受け入れる外国人の安定的かつ円滑な在留活動を確保すること
- 外国人の報酬額が日本人と同等額以上であることを含め、雇用契約が所要の基準に適合すること
- 受入れ後は、受入れ状況等について地方出入国在留管理局に定期または随時の届出を行うこと
- 1号特定技能外国人支援を実施する義務を負い、支援計画を作成すること
以下、実務でつまずきやすい4つの基準(特定技能基準省令2条)を順に見ていきます。
基準1|労働・社会保険・租税に関する法令の遵守
もっとも基本であり、もっとも多く指摘される基準です。
労働関係法令については、次のことが求められます。
- 労働基準法等の基準にのっとって特定技能雇用契約が締結されていること
- 雇用保険・労災保険の適用事業所である場合は、適用手続と保険料の納付を適切に行っていること
- 雇用契約の成立のあっせんを行う者が存在する場合は、その者が職業安定法に基づく無料職業紹介の届出または有料職業紹介事業の許可を得ていること
社会保険関係法令については、健康保険・厚生年金保険の適用事業所であれば、加入手続・被保険者資格取得手続を行い、所定の保険料を適切に納付していること(猶予制度による分割納付の許可を得ている場合を含む)。適用事業所でない場合は、事業主本人が国民健康保険・国民年金に加入し、適切に納付していること(減免・猶予の適用を受けている場合を含む)が求められます。
租税関係法令については、法人であれば国税(源泉所得税・法人税・消費税等)と地方税(法人住民税)を、個人事業主であれば国税(源泉所得税・申告所得税・消費税・相続税・贈与税)と地方税(個人住民税)を適切に納付していることが求められます。
ここで、実務上とても重要な救済があります。
社会保険料の未納があった場合であっても、地方出入国在留管理局の助言・指導に基づき保険料を納付した場合には、社会保険関係法令を遵守しているものと評価されます。
租税についても同様の考え方が示されています。つまり、未納があること自体で終わりではなく、放置したまま申請することが問題なのです。
なお、特定技能外国人から特別徴収をした個人住民税を受入れ機関が納入していないことに起因して未納がある場合は、租税関係法令を遵守しているものとは評価されません。
そして注意すべき一文があります。
特に、労働関係法令に違反する行為は、欠格事由(不正行為)の対象となり、5年間特定技能外国人の受入れが認められないこととなり得ることから、法令を遵守した受入れを行うよう留意してください。
基準2|非自発的離職者を発生させていないこと
特定技能雇用契約の締結の日前1年以内またはその締結の日以後に、その契約において外国人が従事することとされている業務と同種の業務に従事していた労働者を離職させていないことが求められます。
現に雇用している国内労働者を非自発的に離職させ、その補填として特定技能外国人を受け入れることは、人手不足に対応するための人材確保という制度の趣旨に沿わないためです。
対象となる労働者は、フルタイムで雇用されている日本人労働者、中長期在留者および特別永住者の従業員で、特定技能外国人が従事する業務と同様の業務に従事していた者をいいます。パートタイムやアルバイトは含まれません。
「非自発的に離職させた」に当たる場合は次のとおりです。
- 人員整理を行うための希望退職の募集または退職勧奨を行った場合(天候不順や自然災害の発生、または感染症の影響により経営上の努力を尽くしても雇用を維持することが困難な場合は除く)
- 労働条件に係る重大な問題(賃金低下、賃金遅配、過度な時間外労働、採用条件との相違等)があったと労働者が判断したもの
- 就業環境に係る重大な問題(故意の排斥、嫌がらせ等)があった場合
- 特定技能外国人の責めに帰すべき理由によらない有期労働契約の終了
一方、次の者は除かれます。定年その他これに準ずる理由により退職した者、自己の責めに帰すべき重大な理由により解雇された者、有期労働契約の期間満了時に更新しないことにより終了された者(一定の場合に限る)、自発的に離職した者。
1名でも発生させていれば基準に適合しません。 該当するかどうかの判断に迷う場合は、まず地方出入国在留管理局に相談することとされています。また、非自発的離職者を発生させた場合は、受入れ困難に係る届出を行う必要があります。
基準3|行方不明者を発生させていないこと
同じく締結の日前1年以内またはその締結の日以後に、受入れ機関の責めに帰すべき事由により、外国人の行方不明者を発生させていないことが求められます。
ここでいう「外国人」には、受け入れた特定技能外国人のほか、実習実施者として受け入れた技能実習生も含まれます。
「責めに帰すべき事由」があるとは、雇用条件どおりに賃金を適正に支払っていない場合や、支援計画を適正に実施していない場合など、法令違反や基準に適合しない行為が行われていた期間内に、外国人が行方不明となった場合をいいます。この場合、人数に関係なく、1人でも発生させていれば基準に適合しません。
さらに、次の点も明記されています。
行方不明者を発生させた特定技能所属機関が、基準に適合しないことを免れるために別会社を作った場合は、実質的に同一の機関であると判断して、当該別会社も行方不明者を発生させた機関として取り扱うことがあり得ます。
基準4|欠格事由に該当しないこと
次のいずれにも該当しないことが必要です。
- 拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
- 労働基準法・職業安定法・最低賃金法・労働者派遣法・賃金の支払の確保等に関する法律・育児介護休業法など、出入国または労働に関する法律の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり等の日から起算して5年を経過しない者
このほか、暴力団排除の観点からの欠格事由、社会保険各法・労働保険各法における事業主としての義務違反による罰金刑なども定められています。
受入れ機関の基準で、実際にご相談が止まるのは 「社会保険料の未納」と「非自発的離職」の2つです。
未納については、悲観される必要はありません。 運用要領には、地方出入国在留管理局の助言・指導に基づいて納付した場合は遵守しているものと評価すると はっきり書かれています。 大切なのは、申請前に状況を正確に把握し、必要な手続を先に済ませておくことです。 黙って申請して、審査で出てくるのがいちばん良くない進め方です。
非自発的離職のほうは、判断が難しい領域です。 人員整理としての希望退職の募集は原則として該当しますが、 自然災害や感染症の影響で経営努力を尽くしても雇用維持が困難だった場合は除かれます。 ご相談では、その離職がどういう経緯だったのかを丁寧にうかがい、 必要なら入管への事前相談から入ります。
どちらも、受入れを決める前に確認しておけば手が打てる話です。 採用の話が具体化する前の段階でご相談いただくと、選択肢が多く残ります。
申請取次行政書士 多伊良 壮平
受入れ後の届出
特定技能は「許可を取ったら終わり」の制度ではありません。受入れ機関には、地方出入国在留管理局への届出義務があります。
随時の届出(事由が生じたとき)
| 届出 | 内容 |
|---|---|
| 特定技能雇用契約に関する届出 | 契約の変更/契約の終了/新たな契約の締結 |
| 1号特定技能外国人支援計画に関する届出 | 支援計画の変更 |
| 登録支援機関との委託契約に関する届出 | 契約の締結・変更・終了 |
| 受入れ困難に係る届出 | 外国人の受入れが困難となったとき(非自発的離職者の発生、行方不明者の発生を含む) |
| 基準不適合に係る届出 | 特定技能雇用契約および支援計画の基準等を定める省令の基準に適合しなくなったとき |
| 支援計画の実施困難に係る届出 | 支援計画の実施が困難となったとき |
定期の届出
- 特定技能外国人の受入れ・活動・支援実施状況に係る届出——1年に1度提出します。前述の適格性書類は、この定期届出の添付書類として提出することになります
法令を遵守していないことにより関係行政機関から指導または処分を受けた場合も、その旨を届け出る必要があります。
支援の中身は1号特定技能外国人支援計画の10の義務的支援、支援を自社で行うか委託するかの判断は自社支援か、登録支援機関への委託かをご覧ください。
※ 本ページは出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」(令和8年4月)第2章・第5章・第7章および入管法2条の5、特定技能基準省令2条に基づいて作成しています。 制度は改正されることがあるため、申請時点の最新の取扱いをご確認ください。